(1)嗅上皮性嗅覚障害と、血中微量金属元素との関連性について:嗅覚障害患者の血中微量金属元素を調査し、その病態との関連性について検討した。異常嗅感を有する症例では、鉄、亜鉛、アルミニウムなどの異常を呈する事が多く、またある元素の異常を有する患者では他の元素の異常を伴う事が多く、全体的な栄養バランスが重要であると考えられた。また味覚障害との関連性が明らかになっている亜鉛についてみると、嗅覚障害の原因別の血清亜鉛値については有意の差は無かったが、嗅上皮性嗅覚障害患者について、亜鉛値の低い症例などで試みに硫酸亜鉛の内服療法を行ってみたところ、従来の治療法単独よりも良好な成績を得ることができ、その治療の一助となる可能性があると考えられた。 (2)感冒罹患後の嗅覚障害の臨床病態について:嗅覚障害患者の臨床統計を調査した結果、感冒罹患後の嗅覚障害の特徴として、中年の女性に多いこと、基準嗅力検査では比較的軽症であるが、静脈性嗅力検査では高度な障害が多いこと、異常嗅感症を伴う場合が多いこと、等の点を明らかにした。 (3)感冒罹患後の嗅覚障害の原因ウイルスについて:感冒罹患後の嗅覚障害の発症の季節による変動を調べ、上気道炎を起こすウイルスのうちでも、エンテロ、アデノ、パラインフルエンザなどが、原因として可能性が高い事をつきとめた。そこでこれらの内の幾種類かのウイルスに的を絞って、血清学的検索を行い、特にパラインフルエンザ3型との関連性を指摘した。
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