研究概要 |
平成4年度において、高橋らの研究組織は長崎大学歯学部附属病院第2保存科を受診したadult periodontitis16症例,rapidly progressive periodontitisの4症例からの歯肉組織を採取し、歯肉内の浸潤細胞について各種モノクローナル抗体による免疫組織化学的検討を行った。まず、厚さ4μmの凍結切片を作成し、ABC法によりインターロイキン1α・1β・2・3・4・6・8,細胞接着分子(ICAM-1,VCAM-1),受容体系遺伝子(C-erbB^2)の染色を施した。それぞれの染色標本から陽性細胞についての分布や比率を求め,臨床所見とくに歯周ポケットの深さと対比させ検討した。その結果,歯周ポケットの浅い症例(6mn未満)では,インターロイキン2・3・4の陽性細胞が多く,歯周ポケットの深い症例(6mm以上)ではインターロイキン1α・2・4・6・8陽性細胞が多く認められた。細胞接着分子であるICAM-1,VCAM-1は樹状細胞・マクロファージ・血管内皮細胞に陽性であり,歯周ポケットの浅い症例で比較的高率に認められた。C-erbB2はポリクローナル抗体(PC11)が歯周ポケットの深い症例の炎症性細胞・線維芽細胞に高率に認められたが,モノクローナル抗体(CB11・CBE1)では極めて低率であった。今後は、ヒト歯周症患患者の歯肉組織に対して逆転写酵素PCR法を用いて,平成4年度に使用した抗体のmRNAの存在を確認する予定であるが,平成4年度後半にはその予備実験として,PCR法の基礎的技術の習得を行った,現在までの所,PCR法で注意を要する点として,純度の高い鋳型DNAの抽出とプライマーの選択であることを確認し,この2点の可変要素を安定させることが本研究の成功につながるものと思われる。
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