プラズマと壁との境界の研究は、制御核融やオーロラの加速機構の基礎研究として重要視されている。ここでは特に非平衡状態である2電子温度プラズマ中の陰極壁近傍の電位形成に注目している。2電子温度プラズマ中では陰極近傍で局所的な電位ギャップが生じ、従来の陰極前面に形成されるダブルレイヤーとは異なる無電流ダブルレイヤーが形成される。この研究は2電子温度プラズマ中での無ブルレイヤーの形成過程を調べることを目的としている。 この研究の特徴は、我々が考案したLaB_6ホロー陰極放電管を用いており、放電状態がグロー遷移領域をへてアークまで安定に生成することができる。この遷移領域は、陰極シース電圧が高く熱電子放出効果があるため、2電子温度プラズマを生成するのに適した状態である。この状態で放電管内部のガス圧力を低下させると、2電子温度プラズマを生成することが可能になり、陰極前面に無電流ダブルレイヤーが形成することができると考えている。 今年度は、LaB_6ホロー陰極放電管の陰極径方向からエミッシブプローブおよびLamgmuirプローブを挿入し陰極近傍の電位分布および電子の速度分布関数f_e(υ)を求め、無電流ダブルレイヤーを形成過程を明らかにすることである。放電電流1.0A、ガス圧力0.08Torrにおいて6eV程度の高速電子を有する2電子温度プラズマが生成され、そのとき陰極近傍で5-6V程度の急激な電位ギャップを確認した。このように2電子温度プラズマの高速成分のエネルギーが電位ギャップ差にほぼ対応しており、無電流ダブルレイヤー形成されていると考えられる。
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