細胞増殖の制御機構のうちでも基本的な過程は酵母からヒトに至るまでかなり共通した要素を持つと考えられる。本研究ではすでに単離されている酵母変異を相補する高等生物の遺伝子を用い、相補能をメルクマールにして人為的に変異遺伝子を作製する。遺伝子産物に対する抗体を作製し、細胞内局在性や細胞周期における発現制御を研究することにより細胞増殖過程に果たす役割を明かにすることを目的としている。 マウス・トポイソメラーゼII遺伝子を酵母GAL1プロモーター下流につなぎ、酵母トポII欠失変異株に導入し、ガラクトースを含む培地で培養すると、増殖が可能となる。実際、ウエスタン・ブロッテイング法によりマウス・トポII蛋白が確認された。この系を用いてトポII蛋白の種類のC末端領域の欠失変異体を作製し、酵母内での相補能、酵素活性及び細胞内局在性を調べたところ、322アミノ酸残基欠失変異体では酵素活性はあるものの核移行ができないために相補しないことがわかった。また、この系を利用して変異源処理による温度感受性変異体の単離に成功した。今後はこの変異体をマウス細胞または個体に導入しての解析を行う予定である。 イネ・cdc2キナーゼ遺伝子を酵母GAPプロモーター下流につなぎ、酵母cdc28温度感受性変異株に導入したところ、弱く抑圧することがわかった。現在、野生型に対し優性に働く変異体を単離することを試みている。
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