好中球中にあって、殺菌作用を担うミエロペルオキシダーゼ(MPO)の過酸化水素-ハロゲン系により強力な化学種を産生し、殺菌の呼吸系を阻害する働きを持つが、ヘムとアポ蛋白が強く共有結合しており、活性中心が「鉄-ポルフィリン」なのか「鉄-クロリン」なのか活性中心の構造は不明である。更に、活性中心のヘムがなぜ特殊な構造を取らなければならないのか、活性発現とどのように関係しているのか全く不明である。 MPOの活性中心のヘムの「モデル化」(ポルフィリン、クロリン型修飾ヘムの合成、再構成蛋白合成)を精力的に行い、種々の分光学的手法(EPR、^1H-NMR、共鳴ラマン、MCD、光吸収スペクトル)を用いて本酵素の活性発現機構の特異性、活性中心の特異な電子状態、構造の解明を目指している。 一方、活性中心(ヘム)の構造、モデル化のみならず、活性発現機構の解明にはヘム周辺の構造情報も重要である。ペルオキシダーゼの多様な基質特異性は、ヘムを包み込む蛋白質の構造の違いを反映しており、ヘム鉄を中心とする活性機能がその周辺のアミノ酸残基の種類、構造とどのように結びついているか調べる為、HRPやMPOの活性中心(ヘム)と基質との立体相互作用について分光測定(主としてEPR)より解明する事を試みた。MPOと同様に特異なヘムを持つとされるラクトペルオキシダーゼ(LPO)についても様々な物理化学測定を行ないMPOのそれと比較検討した。MPO、LPO及びHRPはいずれも第2基質としてフェノール類と反応しヘムポケット内でヘム鉄と相互作用するので、種々のフェノール誘導体を用いてヘム鉄の電子状態・ヘム空間との相関を明らかにする研究を積極的に行った。MPO、LPO、HRPいずれも蛋白質の立体構造に関する情報な少なく活性特異性をヘムを包み込む蛋白質の構造の違いから議論できるには至っていない。
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