研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き学習者の内的状態を示すモデルとして次のようなモデルを作り,推定方法を提案した。なお,前年度において知識状態(完全知識,部分知識のみを持つ場合,無知の場合)を区別した項目応答モデルは既に完成し,今年度Behavirimetrikaに採択された。本年度は,次のモデル及び推論方法を開発した。 1)2次元項目応答モデル 真の自信度と能力を被験者の特徴を示す2つの潜在変数によって,項目の特徴と被験者の特徴を明らかにするモデルと推定プログラムを完成し,行動計量学会で発表した。 2)ネットワーク型項目応答モデル ベイズネットワークを利用して,被験者の問題解決過程を表し,各ノード間の推移を条件確率によって示すモデルを完成した。このモデルに基づいて各被験者の状態を判断するために,データを得た後の事後確率を計算することができる。この事後確率によって,被験者の学習状態がわかり,適切なアドバイスを行うことができる。 3)Gibbs Samplerによる項目応答モデル 上記の2つのモデルを含め,学習者の状態を知るためのモデルは複雑である。このような複雑なモデルにおける母数を推定し,かつ,学習者の多次元的特徴を明らかにするには,従来の伝統的な統計的方法では不十分である。複雑な統計モデルの母数の周辺事後分布を数値的に得る方法について,理論的に考察し,現在プログラムを完成させる最終的な局面にある。 以上により,細かく被験者の学習状態を数理統計的に把握し,適切な教授的介入を行うための理論と方法に関して多くの進歩があったと言える。
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