本研究は平成4年度と5年度に研究を計画し、本報告はその1年目の研究の報告である。本研究は理科教育において地域性を生かし、実験・観察を重視して直接経験をする中で基礎基本を学ぶと共に自然への親しみを深める学習活動を充実する為のものである。本研究では有孔虫化石について教材化の可能な地域の選定、見学コースの設定、試料の処理方法などを研究すると共に生徒の活用が可能な属レベルの分類の為の要領を含んだ資料を作成することも目的の一つである。 本年度は宮崎(宮崎層群)、種子島(茎永層群、上中層群)、喜界島(島尻層群)、与論島(現生)、宝島(現生)の有孔虫の採取と有孔虫を含む堆積物に適した分離方法の研究を行なった。その結果、宮崎層群、茎永層群、島尻層群のシルト岩は硫酸ナトリュウム法か過酸化水素法が適しており、茎永層群の硬質砂岩はボロン法以外には一軸圧縮で細かい亀裂を入れて取り出す以外に方法がないこと、上中層群の砂岩中の有孔虫は過酸化水素法が適していることなどが分かった。また、予察的な分類で宝島の現生種に星砂が含まれていることも明らかとなった。分類に必要な文献の研究などを琉球大学と千葉大学で行なった。琉球大学では理学部海洋学科の氏家宏教授に19世紀の有孔虫の文献を貸して頂くと共に分類について御教授頂いた。また、これまでに研究を進めてきた南西諸島の西表島と石垣島の間に位置するラグーン(礁湖)の内部及び周辺部の現生種について琉球大学理学部紀要に氏家教授と共著の論文をまとめた。千葉大学ではCatalogue of Foraminiferaを借用して種についての検討を行なった。筆者が有孔虫教材の導入部として適していると考えている星砂について石川秀雄教授退官記念誌に本年度の研究成果を基に論文としてまとめた。
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