本研究は現在の学校教育で強調されている、自然への親しみ、直接経験、生徒による実験観察、地域の素材の活用などの点を充実するために、有孔虫化石を中学校の理科第2分野及び高校の地学などの教材として活用することを目的とした基礎研究である。本年度は化石の持つ情報を解釈する時に必要な現在有孔虫の分布や生態について研究を行うためトカラ列島及び奄美大島、三島村の竹島、〓島及び串木野で野外調査を行い試料を採取した。平成4年度に採取した宮崎層群、茎永層群、上中層群、島尻層群、琉球層群及び徳之島以南の島の現在有孔虫などの試料とともに分類し研究した。分類した試料は、走査型電顕では質感が大幅に変わってしまう種で、比較的偏平な種について光学顕微鏡で写真撮影を行った。立体的な種については質感が大幅に変わる種であっても光学顕微鏡で撮影した写真を示すことにメリットが少いため走査型電顕だけで撮影を行った。また、理学教育学会、地学教育学会で有孔虫の教材化について意見交換を行った。千葉大学、東京学芸大学では有孔虫について文献調査を行なった。昨年度から今年度にかけて石川秀雄教授退官記念誌(千葉大学)に有孔虫の中で最もポピュラーに知られている「星砂」について実験観察教材として優れていること、分類する場合の基準などを中心に論文にまとめた。宮崎層群の有孔虫化石について英文で論文を準備しJ.R.Flenley教授(Massey Univ.)に校閲をお願いした。また、附属中学校で有孔虫が生徒にどれだけ興味関心を持たれるかをアンケート調査した。
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