研究代表者(中山)が個人の意思決定支援のために開発した満足化トレードオフ法を集団意思決定に拡張し、その理論を用いて合意形成促進のためのコンピュータソフトウェアを開発した。現在、並列分散処理が可能になるように、これをトランスピュータに移植中である。さらに、ある限定された状況下(たとえば各個人の選好の単峰性が成り立つ場合)では多数決が集団決定規則として有効であることから、これと研究分担者(服部)が提案する集団決定規則を組み入れた方法を取り入れ、グループウェアとしてのコンピュータソフトウェアを作成している。また、問題構造の把握に有効なISMや、階層構造として評価する際に広く用いられているAHPのコンピュータソフトウェアを作成した。現在、グループウェアとしてこれらを統合するための設計仕様作成を終え、具体的なコンピュータソフトウェア作成にとりかかっている。 また既に提案されている多数決規則を使った2つの集団決定規則について、従属関係が推移的である場合の勝利従属を考察し、いくつかの知見を得た。そして均等な影響力を与える従属関係がいくつかの基本的な従属関係に分解されるという定理(分解定理)と飽和性と呼ばれる性質を使って、従属関係の構造を解析した結果、新たな性質を見い出した。さらに従属関係を変数としてもつ集団決定規則の勝利従属の性質を考察した。しかし現実問題への適用のためには、これらの性質の検討では不十分で、より多くの集団決定規則の様々な性質を考察する必要があり、現在考察中である。
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