研究概要 |
界面活性剤ミセルの鋳型合成によって形成するシリカ/界面活性剤ナノチャンネル集合体は,均一なチャンネル直径と高い吸着容量から,分離分析あるいは触媒分野での応用が期待されている。また、シリカナノチャンネル集合体を固体基板上に固定して薄膜化することで,応用範囲は格段に広がるが従来の研究では基板に平行なチャンネル方向を持つ材料に限定されていた。本研究では,陽極酸化アルミナ膜を利用して基板に垂直に配向したシリカ/界面活性剤集積膜(PONAM)を作製し,ナノチャンネル内へのキサンテン系色素分子の抽出・逆抽出機構の解明を行った。カチオン性色素であるRhodamine 6G(R6G)およびアニオン性色素であるSulforhodamine B(SRB)の水溶液に,既報に従い作製したPONAMを浸漬し,色素溶液の吸収スペクトルを測定することでPONAMへの色素分子の抽出過程をモニターした。カチオン性のR6Gでは,抽出率・抽出速度共に共存する無機アニオンの疎水性の順列に従うことを確認し,無機アニオンとのイオン対抽出機構に基づくことが分かった。一方,アニオン性のSRBでは,対カチオンが存在しない条件で抽出率・抽出速度共に最も大きな値となり,SRBの抽出に伴い臭化物イオンがPONAMから溶出することを確認した。また,PONAMに抽出されたSRBは,過塩素酸イオンの溶液への浸漬により,SRBが溶液中に溶出し,過塩素酸イオンの濃度の増大に伴い,溶出量が増すことを確認した。この結果は,ナノチャンネル内に存在する臭化物イオンとのアニオン交換機構によるSRBの抽出を示し,PONAMがアニオン交換膜として機能することを見出した。
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