研究概要 |
地磁気の発生機構として知られる地球中心核で起きているダイナモ作用を理解するために、数値シミュレーションによる研究を推進してきた。本年度では、平成16年度に開発した超並列数値計算コードを用いて従来よりも、より実地球に近いパラメータでのMHDダイナモシミュレーションを行った。更に、水星のダイナモ作用の可能性をダイナモシミュレーションによって調べた。その結果得られた成果と知見を以下に挙げる。 1.熱対流の激しさを表すパラメータであるレイリー数に対するMHDダイナモの依存性を調べた。その結果、三種類の解が存在することが分かった。それらの解は磁場生成プロセス及び力のバランスにおいて大きな違いが存在し、特に高レイリー数に対応する解では非効率的な磁場生成が起きることで磁気エネルギーの減少を招くことが分かった。また、磁場及び対流の実効的散逸スケールによって解の特徴付けが可能であるという示唆が得られた。 11項,Physics of Fluids, vol.17,076601,2005参照 2.地球の核は非常に粘性の低い流体として振舞う。そのため、地球の核内のダイナミクスは"準テイラー状態"と言われる低粘性の極限状態にあることが理論的に予測されていた。これまでの数値シミュレーションでは粘性を現実的な値に比して桁違いに大きくとらなければならず、準テイラー状態を再現することができなかった。本研究では粘性を従来より一桁小さな値にとって数値シミュレーションを実施し、準テイラー状態を初めて再現することに成功した。 11項,Science, vol.309,459-461,2005参照 3.水星磁場の起源を調べるために、水星モデルに対するMHDダイナモシミュレーションを行った。その結果、水星磁場が核内でのダイナモ作用によって生じている場合には非双極子成分が卓越する複雑な形態になる可能性があるという示唆が得られた。
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