研究概要 |
視蓋の脳室周囲層には,投射先や形態の異なる複数種のニューロンの細胞体が混在している可能性があり,それを明らかにするために,視蓋脳室周囲層ニューロンの軸索の投射先を,バイオサイチンやbiotinylated dextran amineなどのトレーサーを用いて検出した.まず,側線感覚を司る脳部位である半円堤に投射する脳室周囲層ニューロンを逆行性トレーサー(biotinylated dextran amine)を注入することによって調べた.標識された脳質周囲層ニューロンはその樹状突起と軸索の形態から,以下の3種類に分類された.(1)層構造に垂直に伸びた樹状突起が浅線維灰白層で分枝するニューロン.これは1981年のMeekによる金魚の視蓋ニューロンの分類における,Type XIVニューロンの形態に類似していた.(2)樹状突起が中心白質層で分枝し,この層に留まるニューロン.これは金魚の視蓋においては中心白質層に細胞体を持つ,Meekの分類によるType XIIIニューロンの形態に類似しており,このTypeの亜種と考えられる.(3)層構造に垂直に伸びた樹状突起が視神経線維層で分枝するニューロン.このニューロンはコイにおいて峡核に投射するニューロンと形態が似ており,軸索が半円堤を単に通過しているために標識された可能性がある. また,これらの実験と同時に,スライスパッチクランプ法を用いて,視蓋脳室周囲層ニューロンの活動電位発生パターンの記録と,バイオサイチンを用いた細胞内染色を試みた.これにより,辺縁層まで広がる樹状突起を持つ脳室周囲層ニューロンが多数存在することが明らかになった.これまでどの魚種でもこのような形態のニューロンは報告されていない.
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