前年度、単相試料の合成に成功したpost-perovskite型構造を持っCaIrO_3と、その関連物質に関する研究を行った。 CaサイトのNa置換系、Ca_<1-x>Na_xIrO_3を開発した。x=0における反強磁性転移温度はx〜0.2程度で消失し、ほぼ同時に絶縁体から金属に転移することを見出した。本系は、新たな2次元正方格子上におけるfiling制御型のMott転移系である。金属領域における磁化率は低温に向けて徐々に増加するが、これはx=0における弱強磁性を伴う反強磁性状態の揺らぎに対応している。 Post-perovskite型構造を持つCaIrO_3の多形であるperovskite型CaIrO_3の単相試料を合成した。Perovskite型CaIrO_3は低圧高温で安定な相であるため、合成にはpiston-cylinder型の高圧発生装置を用いた。Perovskite型CaIrO_3はPauli常磁性を示す金属であり、これからpost-perovskite型CaIrO_3は系の低次元化(2次元化)によりMott絶縁体となっていることが明らかになった。 新たなpost-perovskite型構造を持つCaPtO_3単相試料の合成に成功した。系はバンド絶縁体であり、反磁性的振る舞いを示す。 地球惑星科学の研究グループと共同研究を行った。我々が提供した試料を用いたTEM観察、及び一軸圧力下における変形実験により、マントル下部のD"相の性質に対する知見が得られた。
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