研究課題/領域番号 |
05041041
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
広瀬 昌平 日本大学, 農獣医学部, 教授 (00102517)
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研究分担者 |
林 幸博 日本大学, 農獣医学部, 専任講師 (90277400)
TIFIN A.U. ニジェール州農業開発公社, 研究員技師
鹿野 一厚 島根県立女子短期大学, 助教授 (10226110)
ODIGIE G. ナイジェリア森林総合研究所, 主任研究員
岡田 直紀 森林総合研究所, 研究員技官
増田 美砂 筑波大学, 農林学系, 助教授 (70192747)
OYEDIRAN G.O ラドックアキントラ科学技術大学, 講師
若月 利之 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (50127156)
FAGBAMI A. イバダン大学, 農学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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キーワード | ギニアサバンナ / 植生劣化 / 年輪解析 / ヌペ民族 / アフリカ伝統農業 / 水田農業 / アフリカ型稲作 / 低地土壌 / アグロフォレストリー |
研究概要 |
増田・岡田はイギリスにおける文献資料の広範な調査を行った。植生図の検討と現地調査を併用して、ベンチマークサイトと同一気候、地質、地形及び土壌条件で自然植生が残存している地域の代表として、ベンチマークサイトより約200km北西のカインジ国立公園内の森林を見い出した。約1ヘクタールの植生調査プロットの樹種とその分布や土壌の比較により、この地域のギニアサバンナ帯の植生劣化は人為によるものが中心であることを明かにした。 平成6年度9月に、アップランド、フリンジ部、その中間、と集水域のトポシーケンスに3ケ所、各約1ヘクタール、計3ヘクタールに試験的に植栽した合計約50種、2000本の樹種の生育と活着の状態を調査した。この結果、集水域の中で最も植生が劣化しているフリンジ部が最も活着と生育がよく、植生の再生に大きな展望を見い出した。又、ガザ村の女性コミュニテイで生産可能な品質の良い接ぎ木マンゴ-の育苗法を開発した。 基本的研究としては、サバンナ性樹木の成長速度の評価や焼畑後の休閑期間の評価に樹木の年輪解析は欠かせない。このための樹種としては、シエア-バタ-や昆虫の採集等が可能な多目的樹種であるため、伐採をまぬがれこの地の農耕地に広範に残されているシエア-ナッツの木が最適である。しかし、この木には通常の年輪はなく、年齢の推定は困難であった。しかし、炭素同位体比法を開発してシェアナッツの成長速度を測定することに成功した。 広瀬・林それに現地で調査に参加した若月・石田はTifin, Fagbami, Oyediranらとともに、ヌペ民族の伝統的農業生態系の調査を行った。この結果、フリンジから小低地にかけて、極めて複雑で高度に発達した稲を中心とする栽培形態があることが観察された。即ち、一辺数m以内の方形を持つミニ区画「水田」(Togogi kuru),区画が5-10m程度とやや大きい小区画「水田」(Togoko kuru),平行する畝に直角に2-3mの長さの畔が2-3mおきに互い違いに交互に伸びた形態を有するTogogi Naafena(畝の縦横高さのサイズが30cm以下のもの)と、Togoko Naafeena(畝のサイズが150cmにも達することがある)、直系100-200cm、高さ50-100cmのマウンド(Ewoko),畝立て栽培(Gbaragi)それに平地栽培(Baragi)の主な7つの形態を持つことが明かになった。これらの土地利用形態は乾期と雨期、局所的なマイクロレリーフの違いによる土壌水分や養分あるいは雑草の状態で変化する。不安定で少ない降雨、貧栄養で砂質の土壌というこの地の飢弱な生態環境に適応して発達した、持続性のある低地農業システムであると考えられる。雑草のコントロールと除草、土壌肥沃度の確保、土壌水の保全、家畜による鍬耕のないこの地では何よりも労働効率が高い等、すぐれた農業システムであると考えられた。 低地水田の定着を計るために過去2年間で造成した約2ヘクタールの造成水田の平均化を8月に一輪車とバケツ運搬によって行った。水田区画の中に、稲作終了後の1-2月に乾期作用としてEwokoを作った。このEwokoの間の心土を均平化し、Ewokoのマウンドを均せば、機械力を使わず農民のマニュアル労働だけでも、水田の均平化が比較的効率的に行えることが分かった。このようにして均平度を高めた水田で稲作を試行した。ただし、造成水田の土性はこの地の小低地土壌の中でも特に貧栄養で砂質であった。これは、モデル水田の位置選択が悪かったためである 。又、稲作は田植え(8月後半)までは若月が直接指導できたが、貧栄養土壌にもかかわらず施肥量は農民の通常の施肥レベルにとどめ30-30-30kg/ha程度におさえ、かつ施肥時期も農民にまかせた。さらに、水管理、除草もコミュニテイの自発的作業にまかせた。このため、広瀬・林が12月-1月に調査した結果では、収量は2-3ton/haと低レベルに留まった。これは条件の良い土壌で農民が上記の伝統的な方法で稲を栽培した場合と同一レベルであった。このため、かなりの重労働をして水田を造成した割には収量が上がらなかったとして、水田に対する農民の評価は低いものになった。このことは、水田システム造成というハードの整備と、水田システムの利用維持管理法というソフト面での教育訓練が必要であることを示す。しかし、これは科研による学術調査の範囲を超えるもので、通年の専門家の滞在による指導を可能とするJICAの研究協力やプロジェクト方式の技術協力との併用が必要であることを意味する。
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