研究概要 |
ハードウェアーの開発研究では、硬X線及び軟ガンマ線領域で新しいタイプの天体観測用検出器の開発を目標としている。開発研究の中心にあるのが高感度(低バックグランド)の硬X線検出器、井戸型フォスウイッチ・カウンターの改良である。検出器固有のバックグランドを低減するため,ベラル-シュの研究所に新しいシンチレーター結晶の製作を依頼していたが,夏に,32個のサンプルを受領した。その結果,バックグランドの低減に成功しただけでなく,約30%はエネルギー分解能でもNaI(Tl)を越える性能を示し,実用化の目途がたった。 将来の硬X線観測に向けた,実験データの解析研究では,将来我々の研究対象となるであろう硬X線/軟ガンマ線天体を,ASCAを使って研究することを,目標にした。これらの研究は、理論研究で裏打ちすることに努力を払った。本年度の研究対象は硬X線/軟ガンマ線パルス放出と中性子星の磁気圏での粒子加速,超新星爆発でのショック加速,活動銀河(AGN)のジェットでの加速を選んだ。この関係での成果は ・パルサーに関しては、我々のPSR1509-58などの観測から、磁極付近での加速とアウタ-ギャップでの加速が伴存している可能性を指摘すると共に,磁気圏の電気力学を解析して,電場加速の効率を磁場強度や回転周期の関数として求めた。これらの結果はコンプトンガンマ線天文衛星などで見いだされた5つのパルサーの観測を良く説明する。 ・AGNのジェットの研究に関しては、国際的に多波長での同時観測を呼び掛け,その一番手として,EGRET,Whipple,ASCAなどでMkn421を同時観測した。幸運にも観測開始と共に史上最大のフレア-が始まり,多波長で最大級のフレア-の ストリーを観測出来た。現在解析中であるが非熱的な高エネルギー粒子の加速とガンマ線やX線の放射の関係が明らかになってくるだろう。
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