研究課題/領域番号 |
05273102
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩渕 雅樹 京都大学, 理学部, 教授 (30000839)
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研究分担者 |
堀越 正美 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (70242089)
原田 久志 阪大, 細胞生体工学センター, 助手 (10222233)
鍋島 陽一 国立精神, 神経センター神経研, 部長 (60108024)
鈴木 義昭 岡崎機構, 基生研, 教授 (50132733)
佐竹 正延 東北大学, 加齢医学研, 教授 (50178688)
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キーワード | 遺伝子特異的転写因子 / 基本転写因子 / 機能ドメイン / 細胞増殖・分化 / ノックアウト・マウス / 転写活性化機構 / 転写因子ファミリー / 転写因子ネットワーク |
研究概要 |
平成6年度の研究実績を研究者ごとに、以下に要約した。 1)岩渕は、植物ヒストンH3遺伝子のS期特異的発現に関わる転写調節因子群のうち、本年度はWZF-1及びHALF-1の機能ドメインの解析を行ない、前者は負の転写因子であるのに対し、後者は正の転写因子として作用していることを明らかにした。また、オクタマ-シス配列結合因子としてOBRF-1、-2,-3も同定するとともにOBRF-1がS期に多く存在し、このことがH3遺伝子の転写特異性にも関わっていることを示した。 2)佐竹は、発生・細胞分化過程における転写因子PEBP2遺伝子産物の機能を明らかにするため、マウス血球由来細胞株におけるこの遺伝子の発現を調べた結果、PEBP2αA及びTEBP2αBともにTリンパ球分化の極めて早期より発現していることを明らかにした。また、PEBP2αAの発現は生殖細胞特異的であることも明らかにした。 3)鈴木は、絹糸腺における階層的遺伝子制御システム研究の一環として、セリシン1遺伝子のSA領域とフィブロイン遺伝子のFA,FB領域に結合する転写因子SGF-1を精製し、そのcDNAをクローン化した。SGF-1はfork head/HNF-3ファミリーのメンバーで、Bombyx fork headと同一であった。胚中絹糸腺分化に伴うmRNAとタンパクの発現の様相を解析した。 4)鍋島は、筋細胞分化に関わる転写因子myf5,MyoD,myogeninの機能をノックアウト・マウスを作出して解析した結果、myotomeに最初に現れる筋芽細胞は、myf5-MyoD-MRFで決定と分化が制御されており、体幹と四肢に現れる細胞は、myf5-MyoD-myogeninと発現して分化する筋細胞であることを明らかにした。また、bFGFに加えて筋芽細胞を増殖させる新しい因子としてLPAを同定した。 5)浜田は、神経細胞への分化誘導初期に発現される新規遺伝子を系統的に選択し、多数の遺伝子を単離した。そのうち多くの遺伝子は胎生期の神経管に特徴的な発現を示した。また、Brn-2の発現部位・時期を単細胞レベルで調べ、Brn-2が、神経上皮への決定・ニューロンの移動・成熟など複数の過程で機能しているものと推測した。 6)原田は、インターフェロン(IFN)系における転写制御因子IRF-1、IRF-2の欠損マウスおよび細胞を用い、IRF-1が癌抑制遺伝子として機能し、またアポトーシスの過程において重要な転写因子であることから、細胞増殖制御に深く関わることを明らかにした。さらにIRF-1欠失マウスにおいて抗細菌、抗ウィルス作用の低下がみられ、IRF-1が生体防御に重要な役割を担うことを明らかにした。 7)堀越は、TATAボックス結合因子TFIIDの低分子量サブユニット群をショウジョウバエ細胞より4種単離し、様々な転写調節因子による情報を処理するIFIIDの能力を理解する目的で各サブユニット間の相互作用を検討し、4次構造を推定した。また、転写調節因子VP16による転写活性化機構を知る目的で、様々な変異TBPを用いることにより基本転写に影響を与えず、転写活性化に効果を持つTBPの分子表面を推定した。 8)安田は、αA-クリスタリン遺伝子の水晶体特異的なエンハンサーαCE2に結合する転写因子の構造と機能を解析した。αCE2結合因子はbZIP構造を持つmafファミリーに属し、水晶体特異的な転写因子(L-maf)であることを明らかにした。水晶体形成過程における発現パターンを全胚を用いて解析した結果、L-mafはレンズプラコードの時期から発現が開始し、水晶体細胞で特異的に発言していることを示した。 9)渡辺は、免疫細胞上の抗原受容対を抗原または受容対に対する抗体で架橋すると細胞内HS1タンパクが、非受容体型チロシンキナーゼによって速やかにチロシンリン酸化を受け、シグナル伝達に関与し、さらにリン酸化を受けたHS1タンパクは抗原刺激後、その一部が核内へ移行することを示した。また、HS1と相互作用する新たな核内タンパク(HAX-1)のcDNAを単離し、その構造解析の結果から、NF1(CTF/3)相同部位が存在する転写因子である可能性を示した。
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