研究概要 |
生産・流通,集落(都市・町・村落・城館),墓地等について基礎的な資料集成を行ったが,特に集落関係についての多くの成果が得られた。 すなわち,集落の性格・立地・構造・占有面積・建物の構造と規模について集成した結果,中世の北陸においては,他の諸地域よりかなり広い総柱建物が普及していることまたその出現が10世紀頃にまで遡る事が,判明した。またその出現と確立・普及・変質が,集落構造の変化や集落の盛衰とも密接な関係をもっていたと,考えられた。 また集落の構造は,墓地も含めて理解しえる方向性が明確となり,中世集落の確立が中世的な生産・流通の発達とも関わっていたことも,明かとなりつつある。 このように,これらの成果をさらに積み上げるなら,北陸の中世社会史について多くの事柄を解明できるという見通しが得られつつある。 都市・町・村落・城館を含めた中世集落の総合的な研究は,中世考古学においても,まだ充分にはなされていない分野である。この点についてだけでも,すでにかなりの水準の成果が得られた。 同時に,本研究は生産・流通(農業,窯業,鉄,塩,漆ほか),宗教(墓,寺社)を含めた,社会史的な考察を特色としている。この面についても,総合的な理解を得る方向性が得られたことは,中世考古学・中世史の研究においても,大きな成果であったと言える。
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