ポスト冷戦下の国際変動と日本のODA政策

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05301071
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 木戸 蓊 神戸大学, 法学部, 教授 (30030612)
• 研究分担者: 松下 洋 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (60065464) ; アレキサンダー ロニー 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (40221006) ; 初瀬 龍平 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (40047709) ; 木村 修三 神戸大学, 法学部, 教授 (50153193)
• キーワード: ODA / ポスト冷戦 / 外圧 / 評価 / フィードバック / 参加型開発 / 技術移転 / ベーシック・ヒューマン・ニーズ

研究概要

平成6年度には、本研究の中心テーマである日本のODA政策における3点の問題(1.原則の確立 2.内容の充実 3.地域の拡大)のそれぞれについて、平成5年度の研究で得られた知見について、さらに検討を進めた。グループ別に国際交流基金・文部省・会計検査院などへの出張ヒアリングを行うと同時に、国会図書館・アジア経済研究所などで援助事業報告書などの資料を収集し、メンバーの多くが属する神戸大学内の小規模な研究会で分析する手法をとった。その際、平成5年度の調査研究において中心的位置を占めた原理・原則論、一般論に加えて、太平洋における漁業協力など各地域の様々な事例のケース・スタディーを重視した。その結果、次のような知見が得られた。原則については、外圧追従・理念唱道型の援助原則はいまだ存在するものの、近年、より積極的・実践的な援助政策論としての原則を打ち出す努力や、日本独自の援助形態・方針の主張が見られるようになってきたこと。また、人権、民主化、環境、女性の役割、参加型開発など新しいイシューへの配慮が緊要であること。内容については、受け入れ国におけるセクター間調整やプロジェクトのフィードバックの制度化の必要性、NGOや政府・民間合弁型などのODA以外の形態による援助とODAとの関係調整が求められていること。地域については、アジアとは異なり、単一産業(主に漁業)への依存が続いている多くの太平洋島嶼国における日本の技術援助への期待の大きさと、これらの諸国のニーズにあわない日本のODA政策の問題点、などである。年度末にグループ別研究と小規模研究会の結果を発表・総合する研究会を開き、成果をまとめる予定であった。しかし、兵庫県南部地震のため、研究会の中止、収集資料の一部損失、メンバーの多くの自宅引越・修繕などの事態が起こり、十分なまとめができなかったのが残念である。

研究成果

• [文献書誌] 五百籏頭 眞: "新世界無秩序論をこえて-冷戦後の世界と日本" アスティオン. 第31号. (1994)
• [文献書誌] Alexander,Ronni: "“Guns,Butter and Tuna:Alternative Security in the Pacific Island States"" 『国際協力論集』(神戸大学大学院国際協力研究科紀要). 第2巻・第1号. 115-140 (1994)
• [文献書誌] 平野 健一郎: "人の国際移動と新世界秩序" 国際問題. 第412号. 2-13 (1994)
• [文献書誌] 平野 健一郎: "国際文化交流の新たな位置づけ" 国際問題. (発表予定). (1995)
• [文献書誌] 山谷 清志: "日本の政府開発援助の諸問題" 修道法学. 第16巻. 59-83 (1994)
• [文献書誌] 山谷 清志: "開発援助政策の行政過程" 季刊 行政管理研究. 第67巻. 4-22 (1994)
• [文献書誌] 木村 修三: "『中東の新情勢と日本』(仮題)(うち、論文「暫定自治実施後のパレスチナに対する日本の経済技術協力)" NIRA(研究報告書), (1995)
• [文献書誌] 初瀬 龍平: "鴨武彦編『世紀間の世界政治』第5巻(うち、論文「冷戦の終焉とパワー・ポリティックス」)" 日本評論社, 135-206 (1994)
• [文献書誌] 五百籏頭 眞: "『歴史とアイデンティティ』(ゲーテ・インスティテュート日独シンポジウム講演記録)(うち、論文「近代日本における西洋主義とアジア主義-2つのアイデンティティ」)" 思文閣, (1993)
• [文献書誌] 平野 健一郎(編): "講座現代アジア・第4巻-地域システムと国際関係" 東京大学出版会, xi+385 (1994)