研究概要 |
前年度から継続して行ってきた無菌化したc-Ha-ras(TG)トランスジェニックマウスを,(1)Escherichia coli,Emterococcus fecalis,Clostridium Paraputrificumを投与した群;(2)菌を投与しない群(GFマウス);(3)SPFマウスの腸内フローラを定着させた群の3群に分けてジメチルヒドラジン(DMH)を皮下接種し,さらにもう一群は(2)でDMHを投与しない群の計4群での直腸部での発ガンを比較した。 その結果,腫瘤発生個体数,平均腫瘤数,平均腫瘤スコア(腫瘤の大きさの比較)についての比較から,(2)の無菌状態ではTG+のマウスとTG-のマウスで大きな差はみられず,共に(+)の状態であった。また,(2)のDMHを投与しないマウスでは腫瘤形成は認められなかった。(3)のマウス固有の腸内フローラを保有するマウスでは,TG+のマウスで(++),TG-のマウスで(-)とTGのあるなしで大きな差がみられた。(1)のヒトの腸内より分離した株でのノトバイオートではTG+のマウスで(2)の無菌マウスより強い発ガン状態の(++)となり,TG-のマウスでは無菌マウス同様の(+)の病変であった。 以上のことから,無菌状態ではTGの有無に系わらず,DMHにより腫瘤が形成されるが,腸内フローラを保有する動物ではDMHにより腫瘤形成がTG+のマウスで増強され,さらにマウス固有のフローラにより,その影響は大きく表われた。一方,マウス固有のフローラを保有するTG-のマウスでは腫瘤形成がみられず,腸内フローラによる生体防禦能への影響が示唆された。
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