研究概要 |
腸内フローラの発癌に関係ある機能と考えられるβ-グルクロニデ-ス活性と二次胆汁酸の生成能を指標に菌株を選別してノトバイオートを作出し、ヂメチルヒドラジン20mg/kg/week×20回皮下注射することで誘発する大腸癌の発生率の違いがノトバイオートごとに異なるかを比較検討した。 その結果、マウス腸内フローラのclostridia(CHF)、Loctobacilli(Lact)、とCHF+Lact+Bacteroidesを組合せたもの(AC)で比較すると、ACとLactで発癌率が高く、CHFでは発癌率が低くなった。また、ヒト糞便を投与されたヒトフローラマウスならびに大腸癌患者の糞便より分離したClastridiumのmixtureを投与されたノトバイオートでは発癌率は低くおさえられた。しかし、盲腸内のβ-グルクロニデ-ス活性はACとCHFとヒトフローラで高い値を示し、二次胆汁酸の生成はACとCHFで高い値を示し、発癌率の高かったLactではどちらも活性がみられなかった。 胆汁酸の抱合型を脱抱合する(DC)活性のある株とない株、一次胆汁酸を二次胆汁酸に変換する(DH)活性のある株とない株を組合せて、大腸癌のプロモーターと考えられている二次胆汁酸の生成と発癌率を比較した。その結果盲腸内二次胆汁酸の生成はDC+,DH+,の株の組合せで活性がみられた。また、DC+,DH+,株を投与されたノトバイオートに2%コレステロールを添加した飼料を与えたところ二次胆汁酸の生成量は約3倍に増加した。しかし、二次胆汁酸の生成と発癌率は一致せず、CD+,DH+群とDC+,DH-群で発癌率が高く、DC+,DH+で2%コレステロール飼料群では発癌率は最も低く押えられた。 以上の結果から1DMH投与による大腸癌の発現系では盲腸内のβ-グルクロニデ-ス活性や二次胆汁酸の生成量と発癌率に一定の関係はみられなかったが、常にC-Ha-ras遺伝子導入群で高い発癌率を示した。
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