研究分担者 |
根本 誠二 筑波大学, 歴史人類学系, 助教授 (10250995)
宇佐美 正利 明治大学, 商学部, 講師
渡 浩一 明治大学, 政治経済学部, 講師 (00184002)
林 雅彦 明治大学, 法学部, 教授 (30139448)
孝本 貢 明治大学, 商学部, 教授 (60101333)
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研究概要 |
研究実施計画のとうり,本年度は金比羅,羽黒山を中心に,長野西光寺,奈良東大寺等の古文書,及びそれに付随する掛副等の絵画資料を通じて,民衆的側面からの社寺参詣の実態について,その解明を試みた。 以下,それらの調査により得られた成果について個別に述べてみたい。 (1)金比羅では,金比羅神社の所蔵する約三千冊にのぼる「崇敬講社加入名簿」という講の基本台帳を,地域別に分類,整理することにより金比羅信仰の地域的広がりと,それらが江戸期から明治期にかけてどのような変容を遂げ、さらに近代へと再編成されてゆくのかを分析した。約三千冊の台帳の分類の結果,信仰圏は,西日本全域と東海北陸地方それに関東地方の一部がその中心であることが判明した。また,これらの信仰圏の成立時期に関しては,全てが江戸期以来のものばかりではなく,神道国教化政策のもとに設立された崇敬講を軸にあらたに編入されたものも少なくないこと等も明らかとなった。 (2)羽黒山では,修験の宿坊,橋本坊,勝木坊などに残された古文書のなかから,民衆による参詣を記す「登山参詣帳」を中心に分類整理した。その結果,出羽三山への民衆による参詣が関東地域においても元禄期頃から既に盛んに行われていること等,地方史料からは確認しにくい事実を改めて確認することができた。 以上の研究成果に加え,善光寺門前に位置する長野西光寺の出開帳史料,及び掛副を使った絵解き史料等の分析により,かつての善光寺聖の系譜を引く聖の江戸期における展開と善光寺,西光寺への参詣,奈良東大寺の近世文書のなかから二月堂信仰の講に関する文書調査による民衆の講的参詣の実態等,全国で展開された社寺参詣の実態を民衆側の参詣行為を中心に構造的に捕らえる事ができたことが本年度の研究実績の概要である。
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