研究課題/領域番号 |
05401010
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺地 遵 広島大学, 文学部, 教授 (60033487)
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研究分担者 |
水羽 信男 広島大学, 文学部, 助手 (50229712)
植村 泰夫 広島大学, 文学部, 助教授 (40127056)
楠瀬 正明 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40033518)
曽田 三郎 広島大学, 文学部, 助教授 (40106779)
小尾 孟夫 広島大学, 学校教育学部, 教授 (10033507)
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キーワード | 王朝権力解体過程 / 政治過程論 / 権力中心(首都) / 権力中心集団 / 泰桧 / 岳飛 / 西晋大都督制 |
研究概要 |
従来、東洋における王朝権力解体過程を(1)戦争の敗北等による軍事力の弱化と崩壊、(2)財政破綻、(3)政権担当集団の分解、(4)首都-地方一体関係の喪失、(5)総合理念・イデオロギーの動揺と無力化等の観点から分析を進めてきた。今年度は明年度の締め括りのため解体過程の政治理論上の再検討に重点を置き研究会を主宰した。就中、猪木正道のロシア・ロマノフ王朝崩壊過程を概括し、理論的に整序した『政治変動論』(1948年)に着目し、(a)政策失敗による皇帝リーダーシップの喪失、権力体内部における擬似皇帝=専制独裁者の現出とメンバーの離反化、(b)中核的権力構成層、奉仕層、軍隊からなる権力中心-首都の動乱・反乱、(c)被統治地方の反抗・離反等が、時間的推移に従って継起することが、理論的に確認できた。本研究代表者が展開し公表した研究の中で「史嵩之の起復問題」(1993年)は上記(a)に該当し、「再論趙興籌」(1994年)は(b)と密接に関係しており、「南宋末期台州黄巌県事情素描」(1993年)、「南宋末期撫州事情素描」(1993年)は宋元交替期において旧王朝擁護と新王朝支持とに地方勢力が両極化した具体相を追求したものとして(c)に最も適当することが展望できた。これらの王朝解体の3段階と研究目的で提起した5項目の方法的視点との総合化は、研究計画最終年度(1996年)公刊の成果報告書において詳細に論述する予定となっている。この他、近年公刊された『徽州千年契約文書』の解読・分析を通して、徽州地区における明清権力交替過程の諸側面について相当の知見を得ることができた。これも研究成果報告において併せ明らかにする予定である。なお、今年度業績の中で小尾孟夫は西晋軍事制度変遷の全過程を初めて跡づけ、自ずと西晋朝解体の焦点的場面を照射したものとなっている。曽田三郎は近代史上の上海という王朝権力とは無縁の都市像を素描し、王朝首都論を考察する際の有効な鏡像を提供した。
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