研究分担者 |
吉岡 真 福島大学, 教育学部, 助教授 (70166916)
水羽 信男 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50229712)
曽田 三郎 広島大学, 文学部, 助教授 (40106779)
植村 泰夫 広島大学, 文学部, 教授 (40127056)
小尾 孟夫 広島大学, 学校教育学部, 教授 (10033507)
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研究概要 |
本研究計画では東洋における王朝権力解体過程を分析する視角として,(1)対外戦争の敗北に起因する軍事力の弱体化,(2)財政に破綻,(3)政権内部の抗争と分裂,(4)権力中心-首都と地方の乖離,(5)王朝の倫理的正当性の動揺と否認の5点を提起した。この5項目(条件)は深い相互関連性をもち,果たした役割においても強弱・優劣の相違性を帯びつつも一箇の歴史過程として進行し,最終的には王朝の完全解体・崩壊に至ったことが証明できた。これは本計画の最大の成果である。 具体的には研究代表者寺地遵は,研究成果報告書に収めた(i)「史嵩之の起復問題-南宋政権解体過程研究 記-」,(ii)「南宋亡国史論」,(iii)「宋代史における二つの政治路線」の3論文において,南宋王朝を典型例としての解体過程を,1.上述視角(1)(2)(3)(5)に依拠した権力構造そのものの解体過程と,2.視角(4)に立脚した権力中心-首都と地方の空間的統合関係の弛緩・分解過程とに区別して考察を進めた。なお詳細は報告書に収めた「研究成果概要」において述べておいた。 王朝解体過程に関しては1948年,猪木正道による1910年代半ばのロシア・ロマノフ王朝崩壊に関する政治学的考察(「政治変動論」)が遺産とあったが,中国の王朝解体過程の全体的歴史過程の典型的事例研究は本研究が初めてであり、有意義な成果を得たといえるのであろう。 また研究分担者曽田三郎は、王朝国家から国民国家への転換に当って,中国では地方の合議的集権的地方政権が早期に実現し,逆に首都-中央では展望が提起されつつも,議会も行政府も形成しきれず,この中央と地方の大きな乖離の進行が清王朝解体過程の枢要部分であり、通説の外部的勢力による攻撃ではなかったことを,本研究報告書所収論文「20世紀初頭の官制改革と清王朝の解体」においてとりまとめている。これまた注目すべき本年度の研究成果であるといえる。
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