本研究では、有機リチウム化合物と一酸化炭素との反応により発生する高活性中間体カルボニルリチウムの分子内変換による反応制御を検討した。その結果得られた知見を総括すると以下のようになる。 1.転位を利用したアシルリチウムの反応制御 リチウムシリルアミドと一酸化炭素との反応により発生するカルボニルリチウムにおいて、シリル基の転位を利用する方法がカルボニルリチウムの反応制御に有効であるという知見を得た。 2.環化反応を利用したアシルリチウムの反応制御 ジエニルリチウムやアザジエニルリチウム型のアニオンは、一酸化炭素と反応しカルボニルリチウムを経由する[4+1]型環化反応を起こすことを見出した。これらの結果は、π共役系を含む環化反応の利用がカルボニルリチウムの制御に有効な手段であることを示している。 3.脱離反応を利用したアシルリチウムの反応制御 メチレンアジリジンから調製したリチオ体が一酸化炭素と反応し、開環/再環化というプロセスによりβ-ラクタムのリチウムエノラートに至ることを示した。このことは、カルボニルリチウム中間体からの脱離/付加反応の利用が高活性なカルボニルリチウムの制御に有効であることを示している。 4.窒素の脱離を利用したアシルリチウムの反応制御 リチオシリルジアゾメタンと一酸化炭素との反応によりシリルイノラートが発生することを示した。 本研究では、分子内変換手段として転位、環化、脱離を用いるという方法論が、これまでその制御が困難であるとされてきたカルボニルリチウムの反応の制御に有効であることが示された。その結果、カルボニルリチウムを合成反応における有用な中間体として機能させ得ることが示された。
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