研究概要 |
(研究目的)本研究は、(i)胚中心B細胞の発生・分化における樹状細胞の役割、B細胞の細胞表面機能分子の役割とその発現調節機構の解明、(ii)B細胞細胞表面上の抗原受容体複合体やサイトカイン受容体を介する細胞内シグナル伝達機構の検討、(iii)胚中心B細胞の分化誘導やトレランス誘導の試験管内実験系の確立、(iv)X染色体連鎖B細胞不全(XID)マウスにおける胚中心B細胞の検討、などを行い胚中心におけるB細胞の発生・分化機構とその異常を明らかにすることを研究の目的とする。 (研究方法と研究成果)(i)B細胞の発生・分化における各種機能分子の役割を明らかにするため、XIDマウス、正常マウス、IL-5受容体α鎖トランスジェニックマウス(5Rα-Tg)の骨髄細胞を長期培養し、IL-5やIL-7依存性B細胞株を樹立した。合計42種類の株化細胞を樹立した。XIDマウス由来株価細胞の場合BP-1陽性細胞株がえられず、XIDマウスでは前駆B細胞から成熟B細胞への分化過程に異常のあることがわかった。また、新しいB細胞機能分子を同定するため3種類の特異性を異にする単クローン抗体を調製した。(ii)B細胞細胞表面上の機能分子(抗原受容体複合体、サイトカイン受容体、接着分子)を介する細胞内シグナル伝達機構を明らかにするため、pro-B細胞株,pre-B細胞株、成熟B細胞株を用いて、チロシン燐酸化蛋白の同定、それに関与するキナーゼやその会合分子をIL-5/IL-5R系をモデルとして解析した。IL-5刺激により速やかなShc,Vav,HSlなどの細胞内シグナル伝達分子のチロシンリン酸化が見られた。(iii)IL-5はB細胞の試験管内生存を延長するので、抗IL-5R抗体を用い胚中心B細胞がIL-5Rを発現しているか、胚中心B細胞をPNAを用いて精製しIL-5に応答性を示すか、bcl-2遺伝子の発現亢進があるか、Fas遺伝子の発現の抑制があるか解析している。(iv)IL-5のB細胞発生・分化における生理的意義を明らかにすべく、IL-5Rα鎖染色体遺伝子の相同組み替えマウスの作製を試みている。
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