研究概要 |
B細胞の生存、活性化、免疫記憶に重要な役割を果たすと考えられている胚中心に関しては不明の点が多い。本研究は、胚中心B細胞の同定法の確立、胚中心B細胞の増殖・分化気候ならびに超変異(hypermutation)の分子機構を明らかにし、それを撹乱する要因を明らかにするとともに、その制御法の開発を試みることを目的としている。 (研究方法と研究成果)(1)胚中心B細胞はPNAにより染色されるが、B細胞の生存を延長させるIL-5とCD38に注目し、それらが胚中心B細胞上に発現されているのかを抗IL-5レセプター(IL-5R)抗体と抗CD38抗体を用いた組織染色法で調べた。その結果、胚中心B細胞の一部がIL-5RないしCD38を発現しており、両分子をともに発現しているB細胞も検出された。伴性B細胞不全マウス(XID)のB細胞はIL-5に応答しないが、XIDマウスの胚中心にもIL-5RないしCD38を発現しているB細胞の存在が確認された。(2)脾臓B細胞を抗CD38抗体で刺激すると有意な増殖反応が見られたがIg産生は見られなかった。その系にIL-5を共存させると増殖反応は10倍以上増加し、Ig産生が見られるようになった。両刺激によりB細胞の生存が延長された。(3)IL-5R鎖はIL-5との特異的な結合に必須であるのみならず、シグナル伝達にも必須である。α鎖の細胞内ドメインのプロリン残基に富む領域(Pro-Pro-X-Pro)がシグナル伝達(増殖、チロシン残基のリン酸化、proto-oncogeneの発現誘導)に必須であること、3個のProのうち1個の存在がβcのdimerizationおよびJAK2キナーゼの活性化とリン酸化に必須であること、IL-5刺激に対応しSH2/SH3ドメインを有するシグナル伝達関連分子(Vav,Shc,HS1,PI-3 kinase)が速やかにリン酸化されることなどを初めて明らかにした。またIL-5刺激にともないBruton's tyrosine kinase(Btk)の活性化が見られ、Btk遺伝子に変異のあるXIDマウスのB細胞はIL-5に応答しないことが初めて明らかになった。
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