研究概要 |
今年は,5つの分野について、流通の構造、そこでの取引慣行などについて詳細な実態調査を行った。対象となった分野は、衣料、食料、家電、化粧品、薬品である。これらの分野の調査についてのレポートは、現在調査レポートの形でまとめられつつあり、平成6年夏頃に出版予定の書籍の一部を構成する。この実態調査を通じて分かったことは、商品によって流通の構造は大きく異なり、企業の価格設定行動、流通市場での取引慣行、小売業の構造調整の違いに反映されているということである。また、それぞれの分野における価格決定のあり方、海外との取引の影響、構造変化の実態などについて、かなり詳細な理解を得ることができた。 このような実態調査と並行して、流通の構造と機能に関する理論的な考察も行った。その成果は、現在いくつかの論文の形でまとめつつある状況であり、来年度は上で述べた実態調査の結果とあわせて、研究書の中に取り込んでいきたい。研究計画書にも書いたように、流通業の機能や構造についてこれまで経済学の分野で必ずしもまとまった研究成果があるわけではない。今回の研究成果は、このような真空地帯を埋める上でも有益であると考えられる。とりわけ、メーカーや小売業が流通市場内でどのような競争を展開しているのか、そのような競争が経済厚生的にどのように評価されるのか、再販価格維持行為など独占禁止法違反行為について経済学的にどのように評価できるのかといった点について、重要な視点を提供できるのではないかと考えられる。
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