本年度は、昨年度から行ってきた5つの商品の調査研究を、比較対象する形で研究成果としてまとめた。5つのケースとして取り上げたのは、家電、食品(加工食品)、背広、化粧品、薬品(家庭医薬)で、それぞれの商品について、流通構造がどのようになっているのか、価格がどのように決定されるか、規制がどのようにかかわっているなどについて整理し、流通の機能と構造についての分析を行った。 このような5つの異なった分野の比較を行うことにより、日本の流通構造が持っている共通性と分野による違いがはっきりとした。日本の流通に一般的に成立する重要な特徴は、メーカーが末端の小売業に至るまで販売経路を管理し、様々な形で販売政策を行ってきたことである。家電や化粧品の場合には、これは系列店の整備という形をとる。また、リベートなどが活発に利用されるのも、家電や化粧品の特徴である。背広のような衣料品の場合には、メーカーが卸売り機能を持ち、小売業に対して委託販売などを行う。それによって価格決定権をメーカーの方が持つだけではなく、派遣店員の派遣によって末端の小売の情報を把握するのである。食品では、特約店というメーカーと縦に結んだ問屋制度となっている。薬品の場合には、「薬九層倍」とも言われる価格体系が、同じような観点から分析できる。 以上で述べたような流通業の構造は、モータリゼイションや国際化などの環境変化によって、いま大きな構造変化にさらされている。そういった変化が、小売業の新しい試み、メーカーと小売業の間の連携関係の模索などをもたらしている。本研究では、こういった点についても、詳細な分析を試みた。
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