研究概要 |
本研究は放射過程を含んだ中層大気大循環モデルの開発を主眼としている.本年度は赤外放射スキームの開発を東京大学気候システム研究センターで行う(中島分担)と共に,九州大学において大気モデルの開発を行った.大気モデル開発は, 1)フォミチェフの赤外放射パラメタリゼーションを導入した中層大気モデルの開発 2)下部熱圏へのイオンドラッグ効果の導入と,ダイナモによる磁場変動の計算 3)オゾン化学輸送モデルの開発 の3点を柱として行われた. 1)ではT42・T21モデルを使って計算を行い,水平分解能の違いによるモデルの能力の評価を行った.T42では80km以上の高度で風速が弱まり現実の分布に近づくことが示された.しかし,成層圏においては両モデルとも風速が強く,モデルによる差は小さかった.この結果は,より小スケールの運動(内部重力波)の効果を取り入れる必要性を示している. 2)ではイオンドラッグ効果の導入により,高度80km以上で平均風速や1〓潮汐が弱まることがわかり,イオンドラッグ効果が中層大気大循環に大きな影響を与えることが示された.また,得られた下部熱圏の風速を使い磁場の変動を計算した.その結果,たとえ太陽活動の変動はなくても下層大気の変動の影響のみによって,有為な大きさの磁場のday-to-day変動が生じることが示された. 3)では開発したモデルを使って全オゾン量の季節変動を計算し観測値と比較して,モデルの性能を評価検討した.また,オゾンの3次元的分布の比較検討も行った.その結果,波動による極向き輸送が過小であること,下層でのオゾン消滅過程に問題があることがわかった.
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