研究概要 |
岡山県備中町布賀及び広島県東城町久代のスカルンに伴うアルカリ岩の成因を明らかにする目的で研究を実施した。本年は初年度であるが、今までの調査、研究で明らかになったことの概要について述べる。 1. アルカリ岩の産状 両地域のスカルンは、石灰岩中に貫入した石英モンゾニ岩岩脈の両側に生成されており、火成岩側から石灰岩側にかけて(石英モンゾニ岩)-(アルカリ岩)-(ザクロ石、ベスブ石帯)-(ゲーレン石帯)-(スパー石帯)-(結晶質石灰岩)の明瞭な帯状構造が見られる。しかし、一部に(アルカリ岩)、(ザクロ石、ベスブ石帯)が存在しない場合もあることから、アルカリ岩は初生的なゲーレン石帯、スパー石帯が生成された後に生成され、常にザクロ石、ベスブ石帯を伴っているものと考えられる。 2. アルカリ岩の化学組成 石英モンゾニ岩から結晶質石灰岩にかけての連続的な試料の化学分析を行った結果、初生的に生成されたスカルンに必要な元素は石英モンゾニ岩側から供給されており、その移動の関係は各元素のイオン半径の大きさに依存していることが明らかになった。すなわち、イオン半径の小さいSiが最も遠くまで(約20m)移動し、Siよりもやや大きいイオン半径を持つAl,Mg,Feなどは中間的な移動を示している。イオン半径の大きいNa,Kなどのアルカリ元素、La,Ceなどの希土類元素はスカルン帯中には移動していない。これらの初生スカルンが生成された後でも、石英モンゾニ岩からのSiの供給があり、Siを供給されたゲーレン石はザクロ石、ベスブ石化している。しかし、このSiの移動距離は1m以内である。一方、石灰岩側から石英モンゾニ岩側にはCaの移動が見られる。 3. アルカリ岩の成因 産状及び化学組成から、スカルンに伴うアルカリ岩は、石英モンゾニ岩マグマが初生的なスカルンを生成した際のアルカリ元素の濃縮及びその後のザクロ石、ベスブ石帯の生成に伴う脱Si作用によって生成されたものと現段階では考えられる。
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