球状炭素単体群であるフラーレン分子は、球状電子構造にもとづく特異な反応性と性質をもつことから、新規機能材料としての利用が期待されている。また、これらのフラーレン類は、いずれもサ-キュレン分子より成り立っていることから、種々の非平面型サ-キュレンを合成しその性質を調べることは、フラーレンのもつ特異な機能を解明する上で大変重要である。 1.[7]サ-キュレンの簡易合成 [7]サ-キュレンはチューブ型フラーレンやランセ状フラーレンの内曲面の構成単位となることから、この分子を合成し、その性質を調べることは、フラーレンのもつ特異な性質や機能を解明するために必要である。これまでに報告した[7]サ-キュレンの合成法は、その合成段階が大変長いため多量に合成することは困難である。このため本研究では、中間に架橋ヘキサヘリセンを経る全く新しい合成法を用いた[7]サ-キュレンの簡易合成法を開発した。従来の方法に比べ、合成経路が半分以下となり、全収率も50倍高まり、[7]サ-キュレンの反応性や諸物性を詳細に検討することが可能となった。 2.ヘプタ[5][5]サ-キュレンの合成 分子内に[5]サ-キュレン骨格を二重にもつ[5][5]サ-キュレンの合成法開発を目指して、まず、これよりもベンゼン環が2個少ないヘプタ[5][5]サ-キュレンの合成に成功した。この分子は、C_<70>フラーレンの部分構造となるもので、この諸性質を調べることにより、C_<70>分子のもつ特異な機能を解明することが期待できる。また、今後はこの合成法を利用して、母体となる[5][5]サ-キュレンの合成を検討していく計画である。
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