球状炭素単体群であるフラーレン類は、いずれも非平面型縮合芳香族系であるサ-キュレン分子より成り立っていることから、種々のサ-キュレン分子を合成し、その性質を調べることは、フラーレン分子のもつ特異な性質や機能を解明する上で大変重要である。 1.[7]サ-キュレン誘導体の合成と環反転障壁 昨年度開発した[7]サ-キュレンの簡易合成を用いて、ジアステレオトピックな置換基をもつ[7]サ-キュレン誘導体を合成し、温度可変^1H NMRから環反転のエネルギー障壁を10Kcal/mol(-70°C)と見積ることができた。一方、簡易合成法により合成された[7]サ-キュレンを用い、ラセン状ナノチューブの合成も検討している。 2.[7][7]サ-キュレンの合成 フラーレンド-ナツや折れ曲がりフラーレンなどの内曲面の部分構造となる[7][7]サ-の合成を行った。この化合物は大きな鞍型構造をもつ非平面型分子である。 3.サ-キュレン類の電気化学的性質 合成に成功した種々のサ-キュレン類の電気化学的性質を調べる目的で、これらのCVを測定した。その結果、[7]サ-キュレン類はコロネンやコアニュレンに比べ、酸化や還元が容易に起こることが分かった。
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