研究概要 |
化学肥料及び堆肥を18年にわたって使用しているタイ国のスーリンピーマイ,ピサノロ-ク各水稲試験研究機関の水田圃場並びに60年にわたり施肥試験を継続している愛知県の安城水田技術実験農場の水田圃場を対象として、各試験区の土壌断面の観察調査・各層位土壌の試料採取,水稲収量の解析,土壌の化学分析、植物遺体量の調査などを実施した。 1)タイ国の水田においては、堆肥の使用は作土層の厚さを高めていることが示された。 2)堆肥の効果は、タイの水田においても日本の水田においても、試験開始当初はほとんど認められなかったが、年次に伴い増大することが示された。化学肥料の効果は、細粒質の水田では当初から認められたが、粗粒質の水田では当初全く認められず、中,後期次第に効果があらわれた。 3)タイの三水田においては、全炭素量とCECの間に高い相関性が示された。堆肥連用による有機物供給量の増大また化学肥料連用による植物遺体添加量の増大などに基づき、これらの処理が土壌有機物量を増加させてCECを高め、化学肥料の損失防止に寄与していることが示唆された。 4)タイの水田では高刈りのため刈株に由来する粗大有機物がより多く圃場に残されることなどに基づき、土壌中の粗大有機物中の炭素、窒素が腐植中の炭素、窒素より相対的に高いことが示された。 以上を統合すると、沼帯水田のみならず、熱帯水田においても、堆肥及び化学肥料の連用、とくに両者の併用は、土壌有機物量、CEC、交換性塩基量などの地力特性を改良し、水田土壌の持続性高位生産に寄与することが示されたと考える。
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