研究概要 |
1.モルモット胃幽門部の輪走筋における自発性活動のリズムは筋切片を小さくしていくと頻度が遅く、しかも不規則になる傾向を示すようになる。この場合、外液のNaClのみの濃度を減少させて浸透圧を5-20%だけ低下させると再び正常に回復してくる。細胞膜の伸展によるイオンチャネルの活性化が関与している可能性が考えられるが、まだ明確な証拠を得るまでには至っていない。 2.Caffeine,theophylline,isobutylmethylxanthineなどの薬剤は自発性活動の頻度を低下させ、濃度が高くなると活動を消失させてしまうが、これらはphosphodiesteraseの阻害によって細胞内cyclic AMP濃度を増加させることによると推測される。この抑制は必ずしも膜電位の変化を伴わないし、KイオンチャネルをTEA(20mM)で遮断しても弱い影響しか受けないので、Kチャネルの関与があったとしても重要ではないと考えられる。 3.細胞内Caイオン濃度を制御している筋小胞体に作用するryanodine(1μM)で処理すると3mM以上のcaffeine投与後に長時間持続する収縮が発生する。この収縮は外液のCaイオン濃度に依存するので、細胞内へのCaの流入によるものと考えられる。この持続性収縮の発生途中に自発性の相動性収縮がほぼ正常のリズムで現れ得るし、この時細胞内Ca濃度も高く維持されているので、自発性活動は細胞内Ca濃度の増加によって本質的な影響を受けない機構で発生しているものと言える。 4.Protein kinase C(PKC)やtyrosine kinase(TK)を阻害する薬剤も自発性活動のリズムを抑制するが、酵素活性の弱いとされている関連薬剤の作用の結果からは、現在のところ必ずしもPKCやTKが自発性活動の発生に重要な役割を演じていることは結論できない。
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