研究概要 |
石川県梯川流域のカドミウム(Cd)汚染地住民3,178人,非汚染地住民294人に対して,アンケート調査,早朝尿の採取を行った。尿について,カルシウム(Ca),リン(P),クレアチニン(Cr),β_2-ミクログロブリン(β_2-m)の測定を行い,Cd汚染地住民におけるCa,Pの排泄増加の有無,及び,それに及ぼす要因について検討を行った。 Ca,P,Ca/Pについて,算術平均値及び幾何平均値を性・年令階級別に,Cd汚染地住民と非汚染地住民について算出し,両者間の比較を行った。幾何平均値でみると,Ca濃度はCd汚染地住民で15〜17%非汚染地住民より高値であり,その差は有意であった。P,Ca/Pについては,両者間に有意差を認めなかった。Ca排泄増加に関連する要因を,Cd暴露について検討した。即ち,Cd汚染地居住期間及びCd汚染米摂取の有無が,尿中Ca排泄増加に影響したかを,性・年令階級別の平均値により検討したが,Cd汚染米摂取がわずかに影響していることが示唆された。次にCd暴露の指標として,尿中Cd濃度を用い,Ca濃度を目的変数,年令,尿中Cd濃度を説明変数として重回帰分析を実施した。重相関係数は,全て有意であり,尿中Cd濃度がCa排泄と密接に関連していることが明らかとなった。これは,Pについても同様であった。説明変数に尿中β_2-mを加えても,これは要因としては,有意の関係ではなかった。さらに,尿中蛋白,糖,アミノ-N,Na,K,Cu,Znを説明変数として加えて,重回帰分析を行うと,Ca排泄は,アミノ-N,Naと,P排泄は,アミノ-N,Na,Cu,Znと密接に関連していた。Cdは常に正の偏回帰係数であり,有意な関連が認められた。
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