研究概要 |
1.薄膜レンズの球面補正特性の測定 前年度に設計・製作したサイドエントリ-薄膜レンズを走査透過電子顕微鏡(STEM)プローブフォーミングレンズのポールピースギャップ中に挿入し,当研究グループが考案した微粒子の陰影像を用いる方法で,薄膜レンズ電圧による球面収差係数の変化を測定した.その結果,球面収差係数は薄膜レンズ電圧の増加とともに減少し,200Vと300Vとの間で負に転じた.設計上は,3次の球面収差の補正電圧は367Vであり測定値と一致しないが,これは測定に用いた陰影像法では5次の球面収差を考慮していないためと考えられる. 2.電子光学系の最適化 薄膜レンズは,電子行路上に電極としてカーボン薄膜を置くことにより凹レンズを実現しているため,この薄膜による散乱電子が像コントラストを低下させることが避けられない.そこで,試料からの信号電子は全て検出し,薄膜レンズの薄膜で散乱された電子をできる限り検出しないように電子光学系を最適化した.その結果,試料面から26mrad以下の角度で出た信号電子を全て検出するとき,薄膜で散乱された電子のうち,散乱角6.3mrad以上の電子は検出絞りで除くことができ,散乱電子による像のバックグラウンドを低減できた.散乱断面積の計算から,このとき取り除かれる薄膜による散乱電子は,弾性散乱と非弾性散乱を合わせて約40%であることが分かる. 画像獲得システムの構築 補正した像の解像度とSN比を定量的に評価するため,備品として購入したA/D変換ボードをコンピュータに装着し,STEM像をディジタル化して,そのパワースペクトルから解像度を,また2枚の像の相関からSN比を測定するシステムを構築し,像信号を忠実に取り込めることを確認した.
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