上水処理では希薄な物質を除去する必要があり、これまで生物処理も有効な方法と考えられてきた。しかし、その除去性能が不安定すなわち水質によって能力が一定しないのが問題とされてきた。研究代表者はその理由が微生物をとりまく自然泥の親和性にあることを見い出した。すなわち除去対象物質と泥の親和性が高いと、水中から泥への物質の移行が容易になり、微生物が分解しやすくなる。さらに、その親和性が水中のpHおよびマグネシウム、カルシウム量によって変動することを見い出した。これらの結果から、上水の生物処理ではpHと(mg/Ca)比を制御する方法を推奨し、その開発を目的とした。pHと(mg/Ca)比を横軸、縦軸とする二次元マップ状に水質状件と除去率を表現する新たな方法を提案し、最適制御設定値を見い出すことに成果を上げ、制御実験で、いわゆるハニユム装置、砂利3材カラム、粒状活性炭3材カラム、オゾン-粒状活性炭カラムを140日以上にわたる長期実験を実施した。その結果、いづれも高い除去率を達成し、その実用性を確認した。残された問題は生物処理法そのものではなく、pHや(mg/Ca)の自動制御法の改善のみとなった。自動制御法の改善法の具体的課題はpH自動制御とMgないし、Caの自動制御にあるが、前者はすでに実用レベルのディジタル制御法が確立されているのに対し、後者が問題を残している。特に有効なセンサーの開発が遅れている。ただ、ラボスケール使用目的にCaセンサーは市販されているので、その実用的開発で対応できるものと確信している。
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