研究概要 |
In situ分子雑種法に,蛍光ラテックス粒子(ビーズ)標識を利用する試みの成否は,ラテックス粒子の大きさで決まると考えられた.細胞表面のIgA-Rcレセプターの証明に用いた500Åの大きさのラテックス粒子は,DNAの螺旋や20Åのオーダーの溝には大き過ぎる.In situ法では,変性染色体DNAにビオチン標識した遺伝子プローブを分子雑種させるが,このとき,ビオチン標識塩基はDNAプローブの上に20個に1つの割合,すなわち60Å間隔で存在する.ビオチンと塩基は5-10Åのカプラー部を介して結合しているので,ビオチン自体はDNAの溝の外にはみ出している.従って,60Å間隔のビオチンをアビシンで囲んだFITC標識したビーズで証明することになる.このさい,50Å=0.05μmの粒子であれば結合が可能な筈である.しかし,現実には,この大きさのビーズでも,10Åの分子サイズをもつFITC-アビジンに比して,検出感度は好転しなかった.原因は,結合したビーズの水洗時の脱落と,背景への沈着,弱い蛍光強度にあった.さらに小さいビーズ(10Å)を用いても同様で,粒子はFITCそのものの大きさに接近し,蛍光強度からいってFITCそのものを用いる方がよいこととなり,今回の試みは,その発想自体に矛盾をはらむこととなった.結合数の定量の点からもビーズが有利と考えられた.以上から,今回の試験研究はin situ分子雑種法の原理的な側面を解明したに終り,この結果を論文とする方向で,研究のまとめを図った.途中から,通常のin situ法によるラットのエリトロポイエチン・レセプターの証明と,in situ法に影響を与える標本中のDNAの空気中での酸化の研究を加えて発表し研究を終了した.
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