平成5年度より始まり6年度に継続するこの研究の目的は、19世紀のドイツ美術の重要な特徴である地域性の問題を、ドイツ各地の重要な同時代美術のコレクションの成立、発展の跡を辿ることによって明らかにすることにある。 平成5年度は、当初の計画通り、19世紀ドイツ美術関係の基本資料の整理と基本的な調査が主体となった。日本国内で入手可能な資料を中心に、ドイツ各地の公共美術館における19世紀美術(特にドイツ美術)のコレクションの内容を、取得時期、取得経緯に注目しつつ検討した。事前にある程度予想された、19世紀ドイツ美術の展開と受容に関する、地域的特徴が、ある程度具体的なデータとして把握された。 平成5年度は、ドイツ現地での調査を行なうことができず、資料の入手にいささかの困難を感じた。主要な備品として購入を予定していた資料に関しても、資料の中心となる古書の入手ができず、新本として購入可能なものに限られた。その結果、平成6年度も含め、研究の対象がやや狭くせざるを得ないのが残念であるが、その分、ヴイーン、ミュンヘン、ベルリンといった比較的資料の豊富な地域に関しての考察に集中できたとも言える。他方、研究の過程において、同時代美術のコレクションのみならず、オールドマスターの作品コレクションの経緯に対する視点もまた重要であることが、次第に明らかになってきた。
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