今年度に行った研究実績 (1)検出器系のバックグラウンドレベルの低減 多線比例係数管を用いたブラッグ曲線検出器のバックグラウンドの測定を行った。検出器からの出力信号波形の解析によってバックグラウンドの原因はほとんど全て検出器素材に含まれるアルファ放射性物質からのアルファ線であることがわかった。そこで検出器素材をアルファ放射性物質の少ないものと取り替えた。その結果、バックグラウンドレベルの大幅な改善が得られた。 波形識別によるアルファ線の入射方向の判断を加えることで現在のバックグラウンドレベルは2MeV以上のエネルギーのアルファ線に対して1時間当たり0.1カウント程度まで下げることが出来た。 (2)環境物質を用いてのアルファ線の測定 現在の検出系のバックグラウンドレベルで、我々の身の回りにある物質からのアルファ線検出に対してどの程度の感度があるかを調べてみた。絵の具のチューブに用いられている鉛のサンプル(2cm^2)からのアルファ線に対してはS/N比が約10倍の測定が可能であることがわかった。この結果は1時間当たり1カウントの検出頻度の連続スペクトルのアルファ線源に対しての値であるが、不連続なエネルギースペクトルを持ったアルファ線源に対しては、同じ検出頻度の場合さらに10倍以上のS/N比が可能である。 (3)以上の研究成果を広島大学で行われた放射線計測研究会に於いて発表を行った。放射性核種の同定のためには薄い試料によるエネルギースペクトルの測定が必要である。そのためにはアルファ放射性物質の濃縮を行う必要があるが、現在は様々な環境物質の中からアルファ放射性物質を濃縮する技術を研究中である。
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