研究概要 |
1.生長率法による電荷移行反応断面積測定:昨年度に引き続き,従来からの一個のMCP-PSDを用いた生長率法で,以下の各衝突系に対しする電荷移行反応断面積を測定した。 (1)^3He^<2+>-H_2:0.25から1.2keVで今回測定された1電子及び2電子移行反応断面積(σ_<21>,σ_<20>)ともに,我々が1990年に発表した1.0keV以上のデータと良く接続した。またσ_<21>値は、イオンビームガイド法(OPIG)を用いた奥野らの測定値及び島倉らの理論値と一致した。しかしσ_<20>値は,それらの値とは異なるエネルギー依存性を示した。この原因としては,反応粒子が大角度に散乱され一部しか検出器に到達していないと考えられる。 (2)C^+-C_3H_4(アレン),C_3H_4(メチルアセチレン),(CH_2)_3:CH_4と同様な低エネルギー部で断面積が増加するという“異常"がやはり観測された。パラフィン系のCH_4,C_2H_6,C_3H_8で見られた断面積の類似性が,オレフィン系のC_2H_4,C_3H_6および(CH_2)_3でも観測されたが,アセチレン系のC_2H_2,C_3H_4(アレン),C_3H_4(メチルアセチレン)では不明確であった。 2.ビーム減衰法による電荷移行反応断面積測定: C^+-H_2,-CH_4:生長率法で確立した我々の測定値より大きな値となり,やはり現状の装置でより低エネルギーの電荷移行反応断面積を,高精度に測定することには無理があるとの確信を得た。これは衝突系により入射粒子の弾性散乱や電荷移行反応粒子の反跳による大角度分布の影響があるからである。 八重極イオンビームガイド法による電荷移行反応断面積測定装置の製作: 入射及び反応粒子の発散防止用のOPIGを用いたビーム減衰法の為のガス衝突室系の製作を行った。複雑な装置となり製作に時間がかかったため,これを使用した極低エネルギー領域での断面積測定は実施できなかった。
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