本研究では、超原子価ヨウ素化合物の高い反応性を利用して、新しい物質変換プロセスを開発することを目的としている。特に、p-フェニレン型のビスヨードニウム塩を中心として、さらに通常のフェニルヨードニウム塩についても検討した。 1.p-フェニレン型ビスヨードニウム塩の合成:p-フェニレン型ビスヨードニウム塩の合成については昨年度の研究により達成されたので、今年度はヨードベンゼンジアセテートおよびo-ヨードシル安息香酸を用いた新しい超原子価ヨウ素試薬を開発した。 2.p-フェニレン型ビスヨードニウム塩と求核剤との反応:昨年度同様に、アセチレン基を有するp-フェニレン型ビスヨードニウム塩の反応を行った。インダンジオンのエノラートイオンとの反応では、p-フェニレン型のビスヨードニウム塩の高い反応性が観測された。フェノキシドイオンとの反応では、分子内芳香族C-H挿入反応が起こるが、これはたの競争する反応に比べ高い反応性を有することがわかった。このように、アルキニル置換p-フェニレン型ビスヨードニウム塩は求核剤に対し高い反応性を示したが、置換反応はマイケル付加・転位を経て進行することが判明した。求核剤として、アルキニル銅試薬を用いるとさらに効率よく置換反応が進行しジアセチレン誘導体が得られることがわかった。これは、長鎖アルコキシ基を有するヨードニウム塩を用いることにより液晶性ジアセチレン誘導体が合成できた。アリール置換ヨードニウム塩の反応に関しては、ピリジン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルスルフィドを用いると二重置換反応が起こり、パラ置換ベンゼン誘導体が得られた。通常合成困難な1-アリールベンゾチオフェニウム塩の合成にも成功した。
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