本年度においては、昨年度に開発した塩化物イオン電極を検出器とする高速分析システムを改良し、1試料あたりの測定時間を平均して1s以内とすることに成功した。具体的な改良点としては、まずノイズ源であるローラーポンプを使わない送液方法として、密閉型のフローセルを用いアスピレータによって吸引することで高速な送液と、排液の迅速な排出とを同時に達成した。次に試料測定の方法を従来の試料と標準溶液を交互に切り替える方式から、試料と洗浄液を交互に切り替える方式に変更し、一試料あたりの測定時間を1.2-1.3sから0.7-1.2sに縮めることができた。この改良型の測定システムを用いて、臭化物イオンの妨害を検討した結果、10^<-5>M以下の共存は大きな影響を与えないことがわかったので、本法を用いて河川水試料中の塩化物イオンの高速測定を行った。検量線の測定も含めて11試料をわずか20.8sで分析できた。次に、pH応答性ISFETセンサーを用いてその動的応答を調べるためのシステムの開発を行った。本システムにおいては、まずセンサーとしてゲート部分に酸化タンタルを用いたpH-ISFETを使用し、その表面にpH標準溶液を高速で流したまま溶液を電磁弁を用いて瞬間的(数十ms以内)に切り替え、その際のセンサーのpH応答の時間変化を観測し、記録することができる。応答速度の指標として、溶液を切り替えたとき95%応答に達するまでの時間、t_<95%>を用いた。応答速度に影響を与える可能性のある因子として、流速、pH変化の方向、切り替え時の電磁弁の状態、センサー表面の溶液に対する方向の4つを選び、その影響を検討したが、いずれも応答速度、t_<95%>は0.25-0.3sの範囲にありこれらの因子の影響は小さいことがわかった。また、本装置によって得られた応答速度は従来の通説(1msまたはそれ以下)よりはるかに遅いことが明らかになった。その原因については今後の検討が必要である。
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