ホウレンソウより分離した光化学系I(系I)複合体で次のような結果を得た。 1.系I粒子を熱/エチレングリコールで処理し、超遠心分離とカラムクロマトグラフィーで得た、LHCIを含まない系I反応中心複合体、PSI-100とPSI-60のフェムト秒閃光による時間分解分光測定を行なった。これらの複合体でのエネルギー伝達について解析を進めている(アリゾナ州立大・R.E.Blankenship教授との共同研究)。 2.熱/エチレングリコール処理で得た系I反応中心複合体を大豆のフォスファチジィルコリンのリポソームに再構成し、トリプシンで処理した。このように処理したものを穏和なSDS-PAGEで分離すると、未処理のものより分子量の小さくなった3つの緑色のクロロフィル-蛋白質複合体のバンドが得られたが、各バンドには十数本のペプチドフラグメントが含まれていた。等電点電気泳動でも3つのバンドが得られ、これらは数本のペプチドフラグメントで構成されていた。現在後者で得られたバンドの性質について調べている。 3.Triton X-100を用いて調製した系I粒子(chl/P700=200)を強光で照射すると、電子伝達活性の阻害が見られた(光阻害)。系I粒子ではエネルギー伝達が出来なくなったクロロフィルが存在するものと考えられ、このクロロフィルにより吸収された光のエネルギーは酸素を活性化し、この活性酸素により系Iの第二次電子受容体であるA1が破壊され、系I粒子の光阻害が起こるものと考えられる(論文準備中)。 4.プラストシアニン(PC)は系IのサブユニットであるPSI-Fと結合することにより、効率よくP700に電子を供与することができると考えられている。系I粒子とPCの架橋実験により、このPSI-FにはPCを結合する部位が2つあるであろうということを明らかにした(論文準備中)。
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