研究概要 |
ホウレンソウの光化学系I(系I)複合体で次のような結果を得た。 1.Triton X‐100を用いて調整した系I粒子(Chl/P700=200)を強光で照射すると、電子伝達活性の阻害が見られた。この光阻害は酸素に依存し、阻害部位の少なくとも1つは、系Iの第二次電子受容体、A1であるということを明らかにした。また、ラン色細菌の系II欠損変異種から表面活性剤を用いずに調製した。系I膜標品でも光阻害が観察された(論文投稿中)。この系Iの光阻害に伴って、系I反応中心タンパク質、PSI‐AとPSI‐Bの分解が見られ、それらの分解にも活性酸素が関与していると考えられる(論文準備中)。 2.熱/エチレングリコール処理で得た系I反応中心複合体(PSI‐A,‐Bと‐Kの3つのタンパク質より構成され、P700→→FXまでの反応を行う)を大豆のフォスファチジィルコリンのリポソームに再構成した。電子伝達活性の測定により、複合体の方向性は本来のチラコイド膜とは逆、即ち、初期電子供与体であるP700が外側、受容体FXが内側を向いた反転構造になっていると考えられるものが90%以上存在していた。そこで、この再構成膜をタンパク質分解酵素、トリプシンで処理しした後、電気泳動で得られた12のペプチド断片のN‐末端アミノ酸シークエンスを調べ、系Iの構造について検討した。PSI‐AとPSI‐B両サブユニットはHydropathy plotより11カ所のチラコイド膜貫通α‐ヘリックス領域を持つと考えられている。ところが、本研究では、膜貫通領域は8カ所と考えた方が妥当であるという結果を得た。これはラン色細菌の系I複合体のX‐線結晶構造解析(まだ解像力は十分でない)で得られたものと一致する(論文準備中)。 プラストシアニン(PC)は系IのサブユニットであるPSI‐Fと結合することにより、P700に容易に電子を供与する事ができると考えられている。系I粒子とPCとの架橋産物のN‐末端アミノ酸シークエンスの分析により、このPSI‐Fには2つのPCを結合する部位があるということを明らかにした(論文準備中)。
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