昆虫のクチクラは上皮細胞により合成分泌される細胞外層であり、主にキチンとタンパク質から構成される。本研究ではクチクラの分子構築機構解明の一つのアプローチとしてカイコ上皮タンパク質-キチンならびに細胞間の相互作用について解析を行った。 1.カイコ5齢幼虫の上皮タンパク質を抽出し、イオン交換クロマトグラフィー、調製用電気泳動の各精製段階を経て、LCP30を均一タンパク質として分離精製した。また、LCP30以外の上皮タンパク質、LCP17、23、27についても同様の方法で精製を行った。 2.定性的ならびに定量的タンパク質のキチン結合活性を解析する方法を確立し、各上皮タンパク質のキチン結合活性について解析を行った。LCP30とキチンの結合は、N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルキトビオースにより部分的に阻害された。また、LCP30とキチンの結合はLCP17、23および27により阻害された。以上より各LCPはキチンのN-アセチルグルコサミン残基を認識し、キチンと結合することが推察された。 3.カイコ培養細胞を用いた細胞接着実験においてLCP30は顕著な細胞接着活性を示した。この接着活性には分子内のRGD配列が大きく寄与していることが判明した。また、LCP17およびLCP23にも細胞接着活性が存在することを確認した。 4.大腸菌内で発現させたβ-ガラクトシダーゼ/LCP30融合タンパク質はカイコLCP30と同様キチン結合活性ならびに細胞接着活性を有することが判明した。
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