本年度の、とくに1993年夏期につづいた低温は、さまざまの昆虫の生育を阻害し、各地で成虫の発生が遅れた。加えて、この年は大きな台風が週末ごとにくるということで、野外調査の条件としては最悪の年であった。本年度の調査でもっとも重点をおいたのは、九州以南の地方であったが、いずれも気象条件にめぐまれず、めだった成果はなかったが、沖縄の調査で、オキナワキリギリスの生態についてかなりくわしく調べることができたのは、幸いであった。再度調査を行って、音声などの分析を完成させたいと考えている。 つぎに、本年度、上記研究課題で研究を行ったもので発表したものについて述べる。 1.日本列島にひろく分布するヒメギス属は、旧北区東部から見られるもので、従来Metrioptera属とされていたが、この地域のものはそれまでの亜属のひとつのEobioanaに相当すると考えられ、しかもこれを属レベルに扱うことが望ましいと考えられたので、これを独立属と認めた。この属には、イブキヒメギスとengerhardtiの2種が含まれ、後者にはシベリアヒメギスとヒメギスの2亜種が含まれると結論づけ、これらの属、種、亜種の記載をそれぞれ行った。 2.シブイロカヤキリモドキは群馬県以西にみられるが、琉球列島に出現するものでは、ややその出現が早いので、異なる系統のものか、同種の生態型を異にするものか、よく調べなければならないことを論じた。
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