研究概要 |
本年度、とくに1994年においては、日本列島は猛暑に見舞われ、一昨年の夏期につづいた低温による異常気象同様、各地で成虫の発生に乱れが生じ、野外調査のやりにくい年であった。西日本全体が年間の降水量が低く、水不足のところに飛びこんだようなものであった。沖縄(宮古島)での調査はそれでも通常年と同様の印象を受けたが、四国(松山)方面の調査は、高温による乾燥がひどく、同地では調査としては成果にめぐまれなかった。宮古島の調査は、オキナワキリギリスの再度の調査であるが、音声についてはよい録音ができ、現在分析中である。採集された個体はすべて成虫であったため、よい染色体像を得るため、次回はより早い時期に調査をおこなうとよいことがわかった。 つぎに、本年度、上記研究課題で研究を行ったもので論文にしたものについて述べる。 本州に広く分布するヒメツユムシ属 Leptoteratura は albicorne 1種であるが、本属の雄は特異な外部生殖器をもつことによって、琉球列島に産する同属のものとは系統を異にするように思われる。そしてこの系統が中国大陸に由来をもつものであろうと推定していたが(Yamasake,1982)、フィラデルフィアの自然科学アカデミーにある Xiphidiopsis omeiensis を検したところ、L.albicorne そのものであることがわかったので、日本のものと中国のものと比較し、あわせて東南アジアの本属の種分化についての仮説を提出した。これで琉球列島の異起源と思われる本属の種の起源が問題になってきた。
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