本年度、とくに1995年は、日本列島が2年前の夏の連続低温、1年前の夏の連続高温、すなわち猛暑に見舞われたため、夏期の異常気象が長引き、梅雨時の長い低温につづき、ついで急激に猛暑に入った。このため昆虫の成虫の発生の乱れは著しく、野外調査のきわめてやりにくい年であった。調査は3回行われ、第1回は新潟県佐渡ケ島で行った。悪天候の中、現在研究中のキリギリスを採集し、音声も録音することができた。ついで、南西諸島および琉球列島への調査にすすみ、一般的な調査を行ったが、通常年であれば、調査によいと思われた時期であるが、ここでは低温が早くきて、ヒメツユムシの生態などは調査ができず、あまり成績は上げられなかった。 今回の調査での収穫は、ヒメツユムシの佐渡における分布が判明したこと、また中国大陸との関連がますます強くなってきたこと、また琉球列島のタイワンクツワムシの生態をかなりよく調べられたことである。ヒメツユムシに関しては、まだ生態がどうしても究明できないが、肉食性であることはわかってきた。したがって、飼育は可能性が高いと思われる。つぎに、本州のクツワムシは夏に成虫が出るが、タイワンクツワムシは秋に成虫になること、それまでにネジレバネという特殊な寄生昆虫がとりつくが、第2の種と思われるものも得られ、この寄生昆虫から逆にタイワンクツワムシの起源を探ることができるのではないかと考えられ、今後このことに注目すべきと思われた。
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