研究概要 |
Ti-6Al-4V合金について,高温疲労強度に及ぼすショットピーニングの影響を評価しようとするとき,この処理によって試験片表面層に生じた圧縮残留応力,ひずみ硬化といった強化因子の影響と表面欠陥と見なされる表面粗さの増大という弱化因子の影響とを分離しなければならない. 1.表面研摩材の場合,室温,250℃,350℃および450℃の疲労強度は,それぞれ,535MPa,441MPa,410MPaおよび470MPaである.室温から350℃付近までは,温度の上昇とともに疲労強度は漸減するが,その後は,増加する傾向を示し,450℃ではかなり優れた高温疲労特性を示す.この強度上昇は,動的ひずみ時効に起因するものである。 2.研摩材に,直径0.1mm,深さ0.1mmの微小なドリル穴を付すと,この程度の小さな表面欠陥によっても,これらの温度の疲労強度は,それぞれ40%,32%,27%および47%と大きく減少する. 3.研摩材にショットピーニングを施すと,室温,250℃,350℃では,それぞれ16%,18%,7%の増加を示す.これに対して,450℃では,逆に45%も減少し,ドリル穴材とほぼ同じ強度を示す.450℃では,強度の上昇に寄与する圧縮残留圧縮応力が除去され,粗い表面だけが残されたためである.
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